「すいません」と「すみません」の違いとは?正しいのはどっち?

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「すいません」と「すみません」の違い、説明できますか?
デキる社会人が使い分ける、ワンランク上の言葉遣い

カフェで店員さんを呼ぶとき、廊下で人にぶつかってしまったとき、あるいはビジネスメールの書き出しで…。

あなたの口から、つい「すいません!」という言葉、出ていませんか?

日常会話で当たり前のように使われる「すいません」と「すみません」。どちらも同じような場面で耳にしますが、「ビジネスマナーとして、本当に正しいのはどっちなんだろう?」「どう使い分けるのが正解なの?」と、ふと疑問に思ったことがある方も多いのではないでしょうか。

実はこの二つの言葉、単なる言い方の違いではありません。そこには明確な違いがあり、この使い分け一つで、あなたの印象は大きく変わってしまう可能性があるのです。

この記事を読めば、こんなことが分かります

  • 「すみません」が正しいと言える、決定的で揺るぎない理由
  • 謝罪だけじゃない!「すみません」が持つ便利な3つの使い方
  • 私の体験談から学ぶ、言葉遣いで評価が上がった瞬間
  • ビジネスで差がつく、ワンランク上の言い換え表現集

この記事を読み終える頃には、もう二度と「どっちが正しいんだっけ?」と迷うことはありません。言葉遣いに確かな自信がつき、あなたの印象は、周りから一目置かれるものへと変わっていくはずです。

「すみません」が正しい、その決定的理由

まず、いきなり結論からまいりましょう。様々な意見がありますが、ビジネスシーンや公の場、目上の方に対して使うべき正しい日本語表現は「すみません」です。これは揺るぎない事実と言えます。

「え、でもみんな『すいません』って言ってるじゃないか」と思いますよね。確かにその通りです。「すいません」は、「すみません」が話し言葉として発音しやすく変化した「口語表現(話し言葉)」として、広く浸透しています。友人同士の気軽な会話で使う分には、全く問題ありません。

しかし、あなたが「きちんとした人だ」という印象を与えたいのであれば、その使い分けを意識することが非常に重要になります。

💡 豆知識:国の機関も「すみません」を推奨しています

「個人の意見だろ?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、これは国の文化庁が発表している公式なガイドライン「敬語の指針」の中でも、はっきりと示されていることなのです。

「『すいません』は『すみません』が変化したものであり、許容はされるが、改まった場面では『すみません』を使う方が良い」という趣旨の解説がされています。これは、あなたの言葉遣いの正しさを保証してくれる、非常に強力な公的根拠となります。

言葉の成り立ちを知れば、もう迷わない

なぜ「すみません」が正しいのか。その語源をたどると、スッキリと腑に落ちます。

「すみません」は、もともと動詞の「済む(すむ)」から来ています。この「済む」には、「物事が終わる・完了する」という意味がありますよね。この「済む」を打ち消した形が「済まない」です。

何か相手に迷惑をかけてしまったとき、「このままでは、私の気持ちが済まない(収まらない・完了しない)」という、申し訳ない気持ちを表す言葉として使われるようになりました。この「済まない」が丁寧な形になり、「済みません」→「すみません」へと変化したのです。

語源を知ると、ただの謝罪の言葉ではなく、相手への敬意や申し訳なさが込められた、深い意味を持つ言葉であることが分かりますね。

つい「すいません」と言ってしまう、私たちの心理

正しいのが「すみません」だと分かっていても、私たちの口からは、つい「すいません」が出てしまいがちです。これには、ちゃんとした理由があります。

理由1:単純に「発音しやすい」から

これは音声学的な理由ですが、「すみません」の「み(mi)」という音は、一度唇を閉じないと発音できません(マ行は両唇音といいます)。それに対して、「すいません」の「い(i)」は唇を閉じる必要がありません。

「すません」→ 唇を閉じる動作が必要
「すません」→ 唇を閉じる動作が不要

言葉は、より楽な方、発音しやすい方へと流れていく性質があります。「すいません」は、この「発音のしやすさ」から、自然と広まっていったと考えられています。いわば、言葉の“省エネ”モードなのです。

理由2:無意識に「表現を和らげたい」から

「すみません」というハッキリとした言葉よりも、「すいません」という少し崩した言い方の方が、どこか柔らかく、カジュアルに聞こえませんか?

特に、深刻な場面ではない軽い謝罪や呼びかけの際に、「すみません」とキッパリ言うのは少し大げさかもしれない、という心理が働き、無意識のうちに少しだけ表現を和らげた「すいません」を選んでしまう、という側面もあるようです。

実は万能選手!「すみません」が持つ3つの便利な顔

「すみません」は、謝罪の場面で使われるイメージが強いですが、実はそれだけではありません。この言葉は、大きく分けて3つの便利な顔を持っており、これを理解するとコミュニケーションの幅がぐっと広がります。

① 謝罪の「すみません」(ごめんなさい)

これは最も一般的な使い方で、相手に迷惑をかけたことに対する軽い謝罪の気持ちを表します。
例:「会議に遅れてしまい、すみませんでした。」「お借りしたペンをなくしてしまい、すみません。」

② 感謝の「すみません」(ありがとう)

相手に何かをしてもらったとき、「あなたに手間をかけさせてしまって申し訳ない」という気持ちが転じて、感謝の意を表す使い方です。日本文化特有の、相手を気遣う奥ゆかしい表現と言えます。
例:「重い荷物を持っていただいて、すみません。」(=ありがとうございます)
例:「お土産までいただいて、すみません。」(=ごちそうさまです、ありがとうございます)

③ 依頼・呼びかけの「すみません」(失礼します)

相手の注意を引きたいときや、何かを尋ねる前のクッション言葉(前置き)としても大活躍します。「これからあなたの時間を少しいただきますが、失礼します」というニュアンスが含まれています。
例:「すみません、〇〇部の佐藤様はいらっしゃいますか。」
例:「すみません、この書類の書き方を教えていただけますか。」

【コラム】「すみません」と「ごめんなさい」の使い分け、できていますか?

「すみません」とよく似た謝罪の言葉に「ごめんなさい」があります。この二つ、あなたは正しく使い分けられていますか?特にビジネスシーンでは、この違いが重要になります。

すみません ごめんなさい
ニュアンス 公的・社会的。相手との間に距離がある。 私的・感情的。相手との距離が近い。
使う相手 上司、取引先、顧客、知らない人など 家族、恋人、親しい友人など
ビジネスでの使用 △ (基本NG)

ポイントは、「ごめんなさい」は、許しを請う(ご免なさい)という、相手の感情に訴えかける私的な言葉であるという点です。そのため、ビジネスの場で使うと、幼稚な印象や、公私混同している印象を与えかねません。ビジネスでの謝罪は、必ず「すみません」または、後述する「申し訳ございません」を使いましょう。

【私の体験談】言葉遣いで評価が変わった、あの日のこと

ここまで読んで、「言葉遣いって、思ったより奥が深いな…」と感じていただけたかと思います。偉そうに解説している私ですが、もちろん最初から完璧だったわけではありません。むしろ、手痛い失敗を通じて、その重要性を身をもって学んだのです。

😨 失敗談:たった一言で信頼を失いかけた、新人時代のメール

あれは、社会人1年目の夏。初めて一人で担当することになった取引先に、確認依頼のメールを送ったときのことです。自分では丁寧に書いたつもりでした。文末に、こう添えて。

「お忙しいところすいませんが、ご確認のほど、よろしくお願いいたします。」

もちろん、私に悪気は全くありませんでした。しかし、そのメールを送った数時間後、教育係の先輩から内線電話が。「ちょっといいかな?」と静かな声で呼ばれ、会議室に行くと、印刷された私のメールがテーブルの上に置かれていました。

「この『すいません』だけどね」と先輩は優しく、しかし真剣な目で続けました。「お客様へのメールでこれを使うと、相手によっては『マナーを知らないのかな』と不信感を持たれてしまうことがあるんだ。これからは『すみません』、もしくはもっと丁寧な『恐れ入りますが』を使っていこう。君の評価を守るためでもあるからね」。顔から火が出るほど恥ずかしく、同時に、言葉遣い一つで築いた関係が崩れかねないという事実に、背筋が凍る思いでした。

🥇 成功談:「恐れ入りますが」が武器になった、ある交渉の場面

あの失敗から数年後。私は、ある難しい価格交渉の担当になりました。相手は、こちらの要望になかなか首を縦に振ってくれない、ベテランの担当者の方。何度もメールや電話でやり取りしましたが、平行線が続いていました。

最後の提案メールを送る際、私は新人時代のあの言葉を思い出しました。そして、メールの冒頭にこう書いたのです。

「度重なるご連絡、大変恐れ入ります。本件、〇〇様にご負担をおかけしていることは重々承知の上で、最後の提案としてご確認いただきたく、ご連絡いたしました。」

ただ「すみません」と謝るのではなく、「恐れ入ります」という言葉で、相手の状況を深く理解し、敬意を払っている姿勢を示したのです。すると、今までほとんど返信のなかった相手から、すぐに電話がかかってきました。「君のメールは、いつも丁寧でこちらの事情をよく分かってくれているのが伝わる。今回だけ、特別に検討しよう」。この一言が突破口となり、交渉は無事にまとまりました。あの時、言葉遣いを磨いておいて本当に良かったと、心から思えた瞬間でした。

デキる社会人は使いこなす。「すみません」からのステップアップ表現集

私の体験談からも分かる通り、「すみません」を卒業し、状況に応じてより的確な言葉を使い分けることが、ビジネスを円滑に進めるカギとなります。ここでは、ワンランク上の言葉遣いを身につけるための「言い換え表現」を、シーン別に徹底解説します。

📝 「すみません」言い換え図鑑
カテゴリ 言い換え表現 ニュアンスとポイント 使用例
感謝 ありがとうございます 感謝をストレートに伝える最も基本の言葉。迷ったらこれ。 資料を作成いただき、ありがとうございます。
恐縮です 相手の厚意や配慮に対し、申し訳ないほど有り難いという謙虚な気持ちを表す。目上の方に最適。 お褒めいただき、恐縮です。
痛み入ります 「相手の心遣いが身にしみて感じる」という、非常に丁寧な感謝の表現。最上級の敬意を示したい時に。 ご配慮、痛み入ります。
謝罪 申し訳ございません ビジネスにおける謝罪の基本形。「言い訳のしようもない」という意味。 納期が遅れ、申し訳ございません。
お詫び申し上げます よりフォーマルで、改まった謝罪の場面で使う。文書などでも多用される。 多大なるご迷惑をおかけし、心よりお詫び申し上げます。
弁解の言葉もございません 自分の非を100%認め、反論の余地がないことを示す、最も重い謝罪表現の一つ。 今回の不手際は、私の不徳の致すところであり、弁解の言葉もございません。
依頼 恐れ入りますが 相手に手間や負担をかけることを承知の上で、お願いする際のクッション言葉。最も汎用性が高い。 恐れ入りますが、こちらの書類にご記入いただけますでしょうか。
お手数をおかけしますが 相手に具体的な作業を依頼することが分かっている場合に使う。相手への気遣いがより伝わる。 お手数をおかけしますが、ご確認のほどよろしくお願いいたします。
ご多忙のところ恐縮ですが 相手が忙しいことを理解していると明示することで、より丁寧で謙虚な姿勢を示すことができる。 ご多忙のところ恐縮ですが、明日までにご返信いただけますと幸いです。

「すみません」にまつわる、よくあるギモン解決します

最後に、多くの人が抱きがちな「すみません」に関する素朴な疑問に、Q&A形式でお答えしていきます。

Q1.

アルバイト先で「すいません」は、どこまで許されますか?

A. 基本的には「すみません」を使うのが無難です。特に、お客様に対しては必ず「すみません」または「申し訳ございません」を使いましょう。ただし、同僚や親しい先輩との間の、内輪のコミュニケーションであれば「すいません」が許容されることも多いです。お店の雰囲気や、周りの人の言葉遣いをよく観察して判断するのが良いでしょう。

Q2.

「すんません」は、さすがにNGですよね?

A. はい、ビジネスや公の場では完全にNGです。「すいません」をさらに崩した、非常に砕けた表現なので、使えるのは家族やごく親しい友人など、限定的な間柄のみと心得ましょう。

Q3.

長年の口癖…どうしても「すいません」が直りません。効果的な方法は?

A. 意識改革が一番の近道です。まずは、自分がいつ「すいません」と言っているかを客観的に認識することから始めましょう。そして、何か言う前に一瞬だけ「間」を置く癖をつけ、「す…」と言いかけたら「すみません」に言い直す練習をします。メールやチャットなど、文章を書くときは必ず「すみません」に変換するよう心がけるのも効果的です。焦らず、一つずつ丁寧に変えていきましょう。

Q4.

外国人の同僚に違いを聞かれたら、なんて説明するのがスマートですか?

A. 良い質問ですね。こう説明するのはいかがでしょうか。「Both mean ‘Excuse me’ or ‘I’m sorry’. ‘Sumimasen’ is the formal and correct version, which you should use in business. ‘Suimasen’ is a very common, but informal, spoken version. It’s like the difference between ‘going to’ and ‘gonna’.」 (どちらも「失礼します」や「ごめんなさい」という意味です。「すみません」がフォーマルで正しい形で、ビジネスではこちらを使うべきです。「すいません」は非常に一般的ですが、インフォーマルな話し言葉です。「going to」と「gonna」の違いのようなものですよ。)

まとめ:言葉遣いは、あなたを映す鏡。明日からできる、はじめの一歩。

「すいません」と「すみません」。たった一文字の違いですが、その裏には、日本語の奥深さと、相手を思うコミュニケーションの心が隠されていました。

最後に、この記事の最も大切なポイントを、もう一度おさらいしましょう。

  • 正しいのは「すみません」。「すいません」は親しい間柄での話し言葉と心得る。
  • 「すみません」は謝罪・感謝・依頼の3つの意味で使える万能選手。
  • ビジネスでは、「申し訳ございません」「ありがとうございます」「恐れ入りますが」など、より丁寧な表現への言い換えを意識すると、評価が上がる。

完璧な言葉遣いを明日から実践するのは、難しいかもしれません。でも、大丈夫です。大切なのは、まず「意識する」こと。

言葉遣いは、あなたという人間性を映し出す鏡です。そして、それは相手への敬意を示す、最も手軽で、最も効果的なコミュニケーションツールでもあります。

まずは、次にメールを送るその前に、チャットを送信するその前に、「すいません」が「すみません」になっているか、一度だけ確認してみませんか?その小さな一歩が、あなたの信頼を築き、未来をより良い方向へと導いてくれるはずです。

 

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